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大阪地方裁判所 昭和54年(ワ)3944号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

参考判例として、判旨一につき、名古屋高金沢支判昭和31.3.5下民集七巻三号五一二頁がある。

【判旨】

右認定事実によると、原告は、林及び岡本との間で、本件建物について賃貸借契約を締結するとともに本件ガレージの賃借人から賃料等を集金することを委託していたという従来の経過から、原告と岡本との間の右契約関係を承知している被告との間で、本件建物を居住用建物(縫製の仕事をすることを妨げるものでないことはいうまでもない。)として賃料一か月金二万円、保証金(敷金)金五〇万円(ただし、集金業務によつて生ずる損害賠償債務をも担保するものである。)、賃借期間昭和五二年四月一日から昭和五四年四月一日までとの約定で賃貸借契約(本件賃貸借)を締結し、併せて、被告に対し、本件ガレージの賃借人からの賃料等の集金業務を手数料(報酬)一か月金一万円の約定で委託する旨の契約(以下、本件集金契約という。)を締結したものということができ、本件建物の使用目的を本件ガレージ管理のためであるとする原告の主張及び縫製業のためであるとする被告の主張はいずれも採用することができない。そして、本件賃貸借は、本件集金契約を締結したが故になされたものとまでいうことはできないか、右集金契約を締結することを十分考慮して締結されたものというべきである。

二1 請求原因二1については当事者間に争いがない。

しかして、本件賃貸借は、前記認定のごとく本件集金契約を締結することを考慮してなされたものであるとはいえ、主として居住することを目的とした建物賃貸借であることからすると、借家法の適用があることは明らかであるところ、右当事者間に争いのない事実によると、本件賃貸借の更新拒絶の意思表示は、同法二条所定の期間満了前六月ないし一年内という法定期間経過後である昭和五三年一二月四日になされたものであるので、原告のなした右更新拒絶の意思表示は、同法条所定の法定期間の制限に反した無効のものというほかなく、結局、本件賃貸借は、期間満了と同時に更新せられ期間の定めのない賃貸借契約として継続するに至つたものといわなければならない。

しかしながら、原告の被告に対する右更新拒絶の意思表示は、それ自体本件賃貸借の存続と相容れないものであり、また右存続を欲しない意思に出たことが明らかであるから、原告が右意思表示をなした後本件建物の明渡を求める意思を撤回したものと認めるに足る資料のない本件においては、原告の右意思表示には、昭和五四年四月一日の期間満了時において、同法一条の二所定の正当の事由が存することを前提として、本件賃貸借を解約するとの意思表示を包含するものと認めるのが相当であるから、右期間満了時から借家法所定の期間を経過したときは他に解約申入の効力を妨げる事由のない限り有効な解約申入があつたものというべきである。

2 そこで、右解約申入について、借家法一条の二所定の正当事由が存するかどうかについて検討する。

<証拠>を総合すると次の事実を認めることができる。すなわち、

原告は、被告に対し、本件賃貸借締結後再三にわたり本件建物に転居することを求めたのであるが、被告は、前記認定のごとく原告との約定に反し転居せず、その後、昭和五二年七月、本件ガレージに駐車中の自動車の窓ガラスが割られ車中の物が盗まれるという事故が発生し、同年一二月、本件ガレージにおいて火災が発生したが、右事故時にいずれも被告は不在であり、また被告は、昭和五三年七月頃、本件ガレージを賃借している運転手と口論することがあり、さらに昭和五二年四月頃から原告の了解を十分得ることなしに本件ガレージの賃借人から電気代及び水道料金を従前より増額して集金したため、右賃借人から異議を申し出られるということがあつたこと、原告は、右のような点を考慮して、被告に対し、本件賃貸借及び本件集金契約の更新をいずれも拒絶する旨伝えたこと(ただし、右更新拒絶の意思表示をしたことは当事者間に争いがない。)、被告は、原告から右更新拒絶の申し出を受けるや本件賃貸借を終了することには応じないものの、本件集金契約を終了することには即時に応じ、昭和五三年一二月から右集金業務を行なつていないこと、原告は、被告が本件集金契約終了後も本件建物を使用しているため、己むなく、本件ガレージ賃借人からの集金業務を行うために本件ガレージの一隅に仮事務所を設け、ここに原告の事務員を一か月の内約二日間駐在させて集金業務に従事させているのであるが、今後本件建物に集金業務を行う者を居住させ、併せて本件ガレージの管理業務を行わせる意向であること、被告は、本件賃貸借前から居住している住居に居住しているところ、これを明渡し、或いは同住居において縫製の仕事をなし得ないという事情はなく、また被告の営む縫製業の営業形態は前記認定のとおりであり、現に、本件建物において他人を雇用して行なつていた縫製の仕事もやめてしまつていること、以上の事実を認めることができ、<証拠判断略>。

右認定事実及び前記認定にかかる本件賃貸借締結に関する事情、とりわけ本件賃貸借が本件集金契約を締結することを十分考慮して締結されたものであることを総合勘案すると、原告の本件解約申入は、借家法一条の二所定の正当の事由が存するものと認めるのが相当である。そうすると、本件賃貸借は、解約申入があつたものと解せられる昭和五四年四月二日から六か月を経過した同年一〇月二日に終了したものというべきであり、被告は、原告に対し、本件建物から退去してこれを明渡すべき義務があるものといわなければならない。

(松山恒昭)

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